ああーこんな感じか。と実感がないまま終わった。早い早いと思って、本当にざざざーっと終わった。今カナダのバンクーバーのカフェに腰掛けて、さてさて振り返りでもしようかなと思っている。
カナダに来たことで、以前留学していたモントリオールを思い出した。ちょうどこの時期は帰国の準備を進めていた頃だろうか。やっとカナダに住んでいるという実感が湧いたところだったと記憶している。いつか、もっと腰を据えて勉強しに来ようと思ったことも覚えている。そういった意味では、アメリカは割とあっさりと「住んでる」感覚が湧いた。パートナーと来たことも大きいだろうし、彼がいわゆる生活の難しいところ(家探しとか)を片付けてくれたところはかなり大きいと思うし、自身も以前より肝が座っているので、多少のことでカルチャーショックを受けることがなくなったのもあるだろう
この1年弱のラーニングはなんだっただろう。1年仕事から離れた価値はあっただろうか
1) 英語
地味にこれ。まだまだなんだけど、自分の新しい仲間になった表現の存在を感じることが増えた。冗談言って笑うことが母国語と同じくらい簡単にできるようになると、いろんな他のことにエネルギーを使うことができる。特に議論になった時、それを実感する。私にとって英語の上達とは脳内キャパを問題解決に回せることを意味していて、より効率的に仕事やプロジェクトができるようになったと思う。何より疲労感が減った
2) 価値観の許容
未だに、会社で学んだ価値観は持っているし、そこから抜け切れていないところは否定できない。気が付いたら人をJudgeしてしまっている時もある。「こいつはxxやな。。」みたいな、そういう「できる」「できない」以外の価値観をもっともっと学びたくて、学びたくて、でも口で言うより難しくて、もがいている。ただ、前より変わったかな、と思った瞬間があった。クラスメートで一人黒人の女の子がいる。なんというか、日本でいうとギャルで、あんまり勉強は得意じゃないみたいだ。特に定量的な勉強が苦手で、口のうまさでごまかしているが、少し聞いていると理解していないのはすぐ分かる。「なんだかなあ」と思いながら、たまに授業の帰りに話したり、図書館で近くに座って勉強するくらいの付き合いだった。
ある日、期末試験前マクロ経済学のReview session (TAが学期で学んだコンセプトをおさらいするセッション)に出席したところ、TAが一つ難しい質問をクラス全体に投げかけた。一瞬で「あ、これ多分誰もわからんな」とわかるような、ひねった質問だった。もちろん私も分からないので、TAがしびれを切らして解答を話すまで待っているつもりだった。ところが、そこで例の黒人の女の子がさっと手をあげて、すらりと解答を述べて見せた。なんというか、衝撃だった。彼女は、毎週の補習に全て参加し、TAに質問に通い、きちんとコンセプトを理解していた。見かけによらず、典型的な努力家。何が一番驚いたかというと、そういった彼女に対して自分が持った尊敬と好感だった。今までの価値観は、非効率な努力はどちらかというと評価していなかったし、どちらかというと「天性的に頭が良い」ことが「格好いい」という考え方だった。地頭の良さ、とでも言うのだろうか。一方彼女は、自分が(言葉を選ばずにいうと)地頭の良いタイプではないことを早々と認識し、努力と時間で人並み以上まで自分を引き上げたのだ。それを、素直に格好いいし、そういう人と仕事をしてみたいと初めて思った
3) 価値の出し方
コンサルタントの働き方がことごとく否定された一年間だった。正しく言うと、否定されたというよりは、使い方を叩き直されたと言おうか。正しいことが正しいで伝わらないのは、理不尽ではなくて当たり前。そんなことも気がつかない、いわゆる恵まれた環境で社会人生活をスタートさせてしまっていた。自分が正しいと思うことに気が付いたら、あとはどうやって人を動かすか。自分が進むべきと思う道を、逆からたどろうとする人々と、どうやったら衝突せずに働けるのか。100%伝わらなくても、どこまで伝えれば転ばないのか。今全てに答えがあるわけではないけど、今まで考えもしなかったことを考えるのは、別の筋肉が必要だ。筋肉がなかった場所に筋肉がつき始めている感覚がある
4) 人生における教訓
Haasの授業では、先生も生徒も成績とか気にしない割に「は」っとする言葉を聞くことがある。こういった言葉を京都大学で聞くことは少なかった。ただこれは、受け取る側(私)の問題もあったかと思うので、闇雲に学校を責めるのはやめておこう。その中でも、特に印象に残った言葉。まだまだあった気がするのに、ここは自分の不真面目さ故か思い出せない
・Sunk costを意思決定に影響させるな(ミクロ経済学)
口に出してみれば当たり前だけど。いくら投資したか、よりも、今現時点からの勝率のみが意思決定に影響すべき、というもの。戦争では、すでに何人犠牲になったかよりも、今いる兵力と相手の兵力のみで進退を決定すべき。常に「元取らないと。。。」という思考回路で動いている自分には結構衝撃的だった
・何にでも興味を持て(統計)
正確にはBe curious。破壊的に難しかった授業のあとの一言だったので衝撃が大きかった可能性はある。質問することを恐れるな。お言葉に甘えて質問しまくってごめん先生。でもなんとか統計の話ができるまで辛抱強く教えてくれてありがとう
・できるようになるまで嘘をつけ (リーダーシップコミュニケーション)
Fake it till you make it. Lead Commの授業で紹介された、ある女性のスピーチだった。自分はここにいるに値しない、自分では実力不足、と思ったら、自分と周りに嘘をつき続けろ、というもの。それが本当に自分のものになるまで、「できるふりをする」大切さ
・難しいからって考えるのをやめてはいけない(企業倫理)
Ethicsという、なんともふわふわした授業で、必ずしもこの授業が好きなわけではなかったが、確かにな、と思った。答えがない、で思考停止しがちなトピックだけに、「時間をとって考える、自分なりにポジションを取る」ということの大切さを教えてくれた
・人と対峙する時、それが本当に正しいと思っているのか、自分のエゴなのかを考えろ(CMOスピーカシリーズ)
そもそもマーケティングの話だったはずだが、この一言が衝撃的で残り全て吹っ飛んだ。自分の意見を言う時、人に反対する時、自分へのエゴが少しでもなかったか。自信を持って言えない辺り、きっとあるんだろうなと思う
あと、言葉ではないが、会計の先生は「準備の大切さ」をおしえてくれた。決して素晴らしいプレゼンターではない(しかも英語ネイティブではない)し、会計なんて世界で一番退屈な授業かと思ったが、生徒をいつも惹きつける授業をしてくれた。ハンデを努力で補うことの大切さを教えてくれた
と書き出してみると、結構ラーニングあったんじゃないかな、と思う。こなければわからなかった事ばかりだし、きっと私の人生を変えた。それが1年仕事を離れる価値があったかなんて、誰にもわからない。ただ人生の2年間の投資は、人生を引き伸ばしてみた時に多分小さい。だから、きっと意味のある意思決定だったんだと思う。かつ、MBAの目的を転職にのみ据えるのもやめよう。そうした瞬間に金銭的投資対効果に考えが縛られて、自分の首を絞める事になる。直後のキャリアとか目先のことよりも、大事な事を学んだと思うから
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